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2000黒部レポート NO-3


7月20日(木・海の日)

目を覚ますと私達の下段の登山者たちは既に出発していた。山小屋は寝入るのも早いが、朝起きるのも早いらしい。午前4時頃には起きだし、5時頃までには出発してしまうそうだ。我々は午前7時頃朝食を済ませ、釣り支度を始めた。今日は黒部川本流を下り、B沢から小屋までを釣り上る計画である。サブザックにパックロッド、昼食、カッパ、行動食等を詰め込み、干しておいたウエーダーを履き、ウェーディングシューズの紐を締め、いざ出発。今日は釣れるだろうか。B沢までは黒部川右岸の川原を約1時間程度。高所恐怖症の人には絶えられない小屋前の吊橋をわたり、ひたすら下流をめざす。このあたりの渓相は、落差もほとんどなくなだらか。宮崎で言うと○○川の「○○の瀬」といったところか。魚留さんは、時々立ち止まり川の流れにイワナを探している。

それにしても水が綺麗だ。透き通った水は、水深がどれくらいあるのか人の感覚を麻痺させるほどだ。実際、黒部に来るまでは、今年は雪が多く雪代が出ていると聞いていたのでこんなに綺麗な流れに出会えるとは夢にも思っていなかった。途中の高台で魚留さんの足が止まった。「でかいのがいる。それも4〜5匹いるね。」 遅れてきた釣吉さんと渓を見下ろすと、○○川の明神淵みたいなポイントに黒い影が見える。「イワナだ。結構でかいすね。尺近いのもいる。」 イワナ達は時折水面まで上昇し、流れてくる虫か何かを食べているようだ。宮崎では、このような綺麗な渓に多くの渓魚が全く無防備に見られることは稀である。このような光景に出会えるのも、C&Rをお願いしている「黒部のイワナを守る会」の皆さんの努力の証であろう。

もうすぐA沢というときに、誰かのザックを発見。他の釣り人が荷物を置いて下流から釣り上ってくるようだ。幸いザックは1つなので釣り人は1人だと思うが、ヤレヤレといった感じになる。とりあえず先を急ごうと歩き始めた矢先、前方50m位のところで釣り人の影が見えた。ザックの主は餌釣り師で、早朝から釣りを楽しんでいたようだった。何匹かのイワナをキープしており、「コノヤロー」という気持ちになるが、C&Rはあくまでお願いに過ぎず強制力はない。黒部のイワナは捕ってはいけないという感覚は、「餌釣り師」たちには全くないようだ。この餌釣り師は幸いA沢手前までしか下っていなかったため、我々は計画どおりB沢を目指すことにした。途中通過したA沢は源流部に雪渓が残っており、流れ出す水も雪代で濁っていた。

B沢はA沢からすぐの距離だった。B沢から下流はゴルジュ帯となっているようで、有名な上の廊下や黒ビンガが行く手を阻む。ここから先は泳ぎを交えないと行けないそうで、泳ぎの苦手な私にとっては、ライフジャケットなしには到底行けそうもなかった。午前9時頃、B沢到着。皆すぐに釣り支度を始めた。やはり一番早かったのは魚留さん。餌釣り師のような偏光グラスをかけてB沢出会いの右側のポイントを狙っている。釣吉さんは、源流の血が騒いだのかB沢を登り始めた。私は、こんな小さなガレ沢にもイワナがいるのだろうかと少々気にはなったが、絶好のポイントの続く黒部本流を前に支流に行く気にはなれず、ファーストヒットは俺だ!と右岸を釣り始めた。黒部源流のような標高の高いところでは、いくら盛夏とはいえ早朝からフライへの反応は厳しいようだ。昨年も黒部に釣行した魚留さんによると、イワナが反応し始めるのは午前11頃からだそうで、今はまだ午前9時。反応が悪いのは分かっているが、そこは「釣り馬鹿3人衆」、渓を前にじっとしている筈はない。

ここで私が魚留さんに馬鹿な質問をしてしまった。その質問とは、「この川の水飲めるんですか?」 魚留さんは、冷たい視線で「あたりまえやん!」 「本当ですか?」と再び私。すると魚留さん、「ここの水が飲めないんだったら、どこの水も飲めんぞ!(怒)」 私、「……」。黒部源流の水は、どんなミネラルウォーターよりも美味かったです。ファーストヒットは、対岸(左岸)に渡って釣りをしていた魚留さんだった。岩盤横のタルミを狙っての結果だった。しかし、絶好のポイントが続くにもかかわらず反応は渋い。まだ時間帯が早いのか、それとも先行者がいたのか?釣り人が多くスレているのか?釣れない時は色んなことを考えるもので、まして魚留さんがポツポツと釣るものだから焦ってしまう。絶好と思えるポイントにイワイイワナ#12をドラッグフリーで流すが全く反応がない。焦りは募る。右岸側はダメだと諦め、私も対岸に渡ることにした。魚留さんは既に数匹釣っていたので、余裕の表情。魚留さんは、うっかりカメラを忘れてきていたため、私のカメラをお渡して公式カメラマンになっていただいた。

対岸を釣り始めてすぐ、大岩の陰になるポイントを発見。イワナは岩に着くというのでこれは絶好のポイントに違いないと、大岩越しにフライをキャスト。着水したポイントは見えるのだが、ドリフトするにつれ全くのブラインドとなる。こんなポイントではある程度のタイミングで空合わせが非常に有効である。ヤマメ釣りの時と同じタイミングで空合わせを決めるとジャストミート!ちょうどタイミングがあったようで本日のファーストフィッシュをなんとか釣り上げることができた。その後、魚留さんが1匹、私も同じポイントで2匹追加した。1匹は今回の釣行で最大となる28.5cmであった。

残念ながら釣吉さんのオレンジフライには、まだイワナは出てこない。再び右岸に戻った魚留さんが、なにやらレッスンを始めた。イワナのポイント、フライを落とす位置、メンディングの方法等など細かく指示している。左から流れ込む流芯の向こうにイワナが付いているらしく、ドラッグのかかったフライに何度となく出てくる。フライをブラックのパラシュートに替えているため、先生にとっては見えにくいらしく、どうも合わせが決まらない。その後、下流のポイントを狙うがやはり合わせのタイミングがずれているようだ。1度だけフッキングしたが、かかりが浅くすぐに外れてしまった。水中でギラッと光ったその魚体は、28cm以上の大物であった。

今日の昼食は「ざる蕎麦?」である。今回の昼食は全て魚留さんにお任せしており、釣行の楽しみの1つにもなっている。魚留さんは、手馴れた手つきでお湯を沸かし、蕎麦の束をゆで始めた。釣吉さんはというと、掛け損ねたイナワに未練があるようで、さっきまでのポイントで黙々とキャストを繰り返していた。そうこうするうちに1回目の束が茹であがった。釣吉さんも諦めたようで食事の準備に参加。黒部川の冷たい水で冷やし、水気を取り、たれにネギを加えていただくことにした。ざる蕎麦は大好物だが、黒部の水で茹でた蕎麦はまた一段と美味しい。あっという間に1本目がなくなってしまった。結局、「生協ブランド」と「信州ブランド」2種類4本の束を3人でたいらげ、みな満腹となった。それにしても、「生協ブランド」と本場「信州ブランド」との差はやはり大きかった。

つづく




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