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2000黒部レポート NO-2


下りは楽勝と思っていたのが間違いだった。太郎平からの下りは予想に反して急坂で、転げ落ちるようにぐんぐん標高を下げていった。毎週の釣行で膝には自信のあった私にも、15キロの荷物を担いでの下りはさすがにきつく、薬師沢が見える頃には膝が笑い始めていた。この分だと帰りの登りは地獄になるに違いないと青ざめてしまった。

薬師沢についてみると餌釣り師2名が休憩をとっていた。すかさず魚留さんが話しかけ、どこから入渓するか等を尋ねている。2人はもう1つ下の沢にかかる歩道から入渓するとのこと。我々はそのもう1つ下から入渓することにした。釣り場が決まってから魚留さんのペースがあがった。いつものことだが魚留さんはいざ釣りとなると殆ど周りが見えなくなるらしい。釣吉さんが写真撮影などで遅れているのも気にせず、入渓地点目指して一目散。釣りの準備も誰よりも早く済ませ、「ちょっと上流に釣り上ってくる。」と言い残して釣り始めてしまった。そして10mも釣り登らないうちに早々と黒部初イワナを釣り上げていた。お見事である。

私にとっては本格的にイワナを狙うのは今回が初めて。もっとも○○川で数年前に数匹釣ってはいるが、その時はヤマメを狙っていてたまたま釣れてしまったというわけで、狙って釣ったのではないのである。まして黒部、私のテクニックが通用するのかちょっと心配になる。魚留さんが釣り始めたので、私も慌てて今回のためにぎりぎりで調達したニューロッド(ノースランド・モスキート 7‘6“#3 4p)にリールをセットし、5X9fのリーダーに6Xと7Xのティペットを約60cmずつ結んだ。これは、私が宮崎の山岳渓流でヤマメを狙うときのごく一般的なシステムである。フライは、この日のために沢山巻いてきたイワイイワナ#12のグリーン。先日、○○町の小渓流で泣き尺を釣り上げた縁起のいいフライである。

魚留さんによるとこの時期黒部には相当釣り人が入っておりかなりスレているとのこと。スレた魚にはハーフシンクが効果的なはずと何の迷いも無くイワイイワナをダウン気味にファーストキャスト。ドラッグがかからないようにメンディングしながらナチュラルドリフトを心がける。すると1投目からイワナが反応。これはいけると確信した2投目、あっさりと黒部初イワナを釣り上げることができた。サイズは20センチを僅かに超える程度であった。釣吉さんもようやく釣りの準備ができ、3人そろって釣り下る。

イワナはヤマメのように速い流れには着いていないようで、「たるみ」や「かがみ」といった流れが無いか遅いポイントを好んでいるようだ。釣吉さんは、小さなフライは見えないらしくとても奇抜なカラーのフライを披露してくれた。そのフライは「エルクヘアカディス」なのだが、ダウンウイングに使うエルクがなんと蛍光オレンジ!いくら盛夏のイワナにテレストリアル(陸生昆虫)が効くといっても、正直なところ面食らってしまった。イブニングでなら出そうな気はするが、真昼間にイワナが釣れるとは思えない。

しかし、信じられないことに黒部のイワナはその奇妙なフライに反応してしまったのだ。私は、「やっぱりこれくらいの標高になると餌が少ないんだろうなー」と思い込むことにした。薬師沢本流との合流点は川幅が広く、いかにも釣れそうな落ち込みとプールが広がっていた。そのポイントは釣吉さんに任せ、私と魚留さんは本流を釣りあがることにした。すぐに数匹のイワナをキャッチ。左股で釣ったのとは全く色が異なり、魚体は真っ黒。どうやらイワナは着いている岩の色に合わせて、自分の色をコントロールしているようだ。

魚留さんは、「別を釣ってくる。3時30分にザックを置いたところに集合しよう。」と言い残し、さっさと行ってしまった。別の谷を釣り登ること約1時間。釣吉さんは、例のオレンジフライでがんばっているようだが、ヤマメと違う遅あわせのタイミングに苦戦している模様。私はイワイイワナ#12のカラーを赤やオレンジにローテーションしながら軽快に釣り上って行った。結果は初日にしては満足できる13匹。最大は27cmで明日以降に尺オーバーを期待させる結果であった。なお、別の谷を釣り登った魚留さんは、尺イワナを2匹釣ったとか。さすがである。

初日の釣りを終え、今日からのベースとなる薬師沢小屋に向かった。すぐに到着するものと思ったのが大間違いだった。木道を延々と1時間ほど歩かされ、疲れ果てたところに今度は急な下り。太郎平からの下りと2時間ほどの釣りで膝の疲労は頂点に達しており、薬師沢小屋の赤い屋根が見えたときには涙が出るほど嬉しかった。この薬師沢小屋への途中、熊笹の茂る木道を歩いていると左前方でガサガサと音がした。最初に気付いたのは先頭を歩いていた魚留さん。釣吉さんは誰かが用をたしているのではと思ったそうだが、その音の主は、なんと「熊」だった。私は黒い影しか見えなかったのだが、魚留さんは目があったとか。そうか黒部には熊がいるんだと思ったが、その時は疲れていたせいか不思議と恐怖感はなかった。

薬師沢小屋は、黒部川本流と薬師沢が出会う標高1,912m地点にある山小屋。登山者はこの小屋を拠点に雲の平や高天ヶ原、三俣蓮華岳に向かうそうで、海の日の前後とお盆のころが一番賑うそうだ。小屋の料金は1泊2食で8,400円、風呂なし。ビールは350mlが500円であった。今日の寝床は、2階の4畳半くらいの部屋の2段目(3畳)であった。明日は既に予約だけで定員をオーバーしており、1畳に2名でお願いしたいと宣言されてしまった。

つづく

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